orutana2020のブログ

文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

一輪の廃墟好き 第60話 悪天候

 年間に数回しか降らないような国は別として、「雨」なるものは人が日常生活を送る上であって当たり前の天候の一つである。

 敢えて説明する必要は無いのかも知れないけれど、晴れの日、雨の日、雪の日、台風の日などなど、自然の気まぐれに起こす天候によって世界の風景はガラリと豹変してしまう。

 無論、家の中で雑誌でも読みながら一日中ゴロゴロしていれば、外の天候がどうなっていようがさして気になるものでは無い。

 だが僕達は今、部屋の中でゴロゴロとも、ジッとしているわけでも無く、この廃墟の所有者にして刑事の淀鴛さんの話しを鵜呑みにするならば、30ほど年前、彼の両親が焼死体で発見された現場を訪れようとしているのである。

 現場は廃墟たる淀鴛家の裏の一角にある湯沸かし用の釜戸

 台所の勝手口から裏庭に出た僕達は、ポツポツと降り始めた雨と夕方という刻が相まって、季節は春だというのに冷んやりとした寒気を肌で感じた。

 加えて目の前に広がる森の木々が、少し強めの風にサワサワと音を立てて揺られ、より一層の不気味さを醸し出す...

「あれだな、話しにあった例の井戸は」

「だねぇ...得体のしれない奴がひょっこり出てきそうな雰囲気がなんとも...」

 僕達が口にしたその井戸には、如何にもホラー映画に登場する風化した古臭さをこれでもかと顕示しているかのようだった...

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