一輪の廃墟好き 第138話 新鮮
ぐったりした僕たちを見かねたのか、淀鴛さんは車を車道の端に寄せて停車してくれた。
と言うか途中で気付いてくれたら尚よかったのだが...
「いやぁ、二人とも車に弱いんだな。意外だったよ。俺が一服するあいだに外へ出て新鮮な空気でも吸うといい」
淀鴛さんはそう言って自ら車外へ出ると、すぐさまタバコに火を付けた。
車に弱い云々以前の問題なのだけれど、反論する元気が残っておらず、隣で横になっている未桜を揺する。
「み、お。外へ出て、気分を入れ替えるぞ...」
「う、うぃぃ...」
彼女は苦しそうに呻き声をあげながらも、なんとかドアを開けて車外へ這い出ることができた。
辺りにはまだ民家が一軒も見当たらず、田んぼと森の豊かな自然の風景が広がっており、幅が3mにも及ばない小川がチョロチョロと音を立てて流れている。
空気は美味いし静かで落ち着く場所だ...
僕はラジ体操終焉さながらに思いっきり新鮮な空気を肺に取り込み、それを口を窄めたままゆっくりと吐き出した。
するとさっきまでの酷い気分がスッカリとはいかないまでも、少なくとも半分以上は気力を取り戻すまでに至る。
僕の隣では未桜が深呼吸を何度も何度も繰り返していた。
「おいおい、そんなに早く深呼吸したんじゃ逆効果になるかも知れないぞ」
一応気遣って言葉をかけたのだが...
「うっし!元気全開~!♪」
マジか!?
清々しくもあっけらかんとした彼女の新陳代謝はどうやら尋常では無いらしい...
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