一輪の廃墟好き 第150話 所有者
僕は助手と同じ轍を踏まないよう髪の中へ慎重に手を入れた。
頭皮の根元から髪先までそっと手を動かし、髪をといて洗うように繰り返す。
「おっ!?」
三回目にして御目当てのモノが手に触れ、思わず声が漏れた。
その御目当てのモノを右手の指で慎重に掴み、ゆっくりと髪の中から取り出し確認する。
「髪留め...ヘアピンってやつか...」
見た感じ、普通に使用していればこのヘアピンで指を切ることはそうそうあり得ないだろう。
未桜はよほど勢いよく手を動かしたに違いない...
「一輪君、ちょっと貸してくれないか?」
「あっ、どうぞ」
僕が素直に淀鴛さんへヘアピンを渡すと、彼は顔を近づけ目を凝らしながら眺めた。
「ん~、お嬢ちゃんの指が切れちまったのはコイツの所為だとは思うんだが、問題はアレだな...」
「所有者が誰なのか?ですよね」
「そう、新川頼子のモノであれば正直こいつは何の役にも立たない。だが別の誰かのモノなのであれば捜査のに進捗をもたらしてくれる。さて、どうしたもんかな...」
少なくともこのヘアピンが新川頼子のモノなのかどうかを瞬時に判別する方法がある。
それは言わずもがな、僕の所持する特殊能力である「想いの線」を発動させることにあったが、能力の存在を知る由もない淀鴛さんを前に、果たして使って良いものだろうか...
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