一輪の廃墟好き 第148話 得たり
とはいえ、調査すること事態にまで影響が及ぶわけではない。
だから集中して黙々と被害者の衣服を調べることはできている。
だが目を見開き綿密に確認したのだけれど、残念ながら犯人への手がかりになるようなモノは一切出てこなかった。
新川武治の妻である新川頼子の衣服を調べていた淀鴛さんの方も同じらしく、衣服をテーブルの上に置き手を止めて溜息をついた。
「一輪君、何か出てきたかい?」
僕はゆっくりと首を横に振りつつ。
「いえ何も...」
折角ここまで来たというのに、何の手がかりも見つからないじゃなぁ...
僕と淀鴛さんの表情に暗い疲労の色が出つつあったその時。
「いっったぁい!!??」
新川頼子の白髪混じりで長い髪を、手でとくように触れていた未桜が突拍子もなく悲痛な声をあげた。
というかまだ調べてたんかい!
いったん心の中で密かにもツッコミを入れて続け様に問う。
「どうした未桜?」
「っつつつ、これ見てぇ。お婆さんの髪をといてあげてたら何かに引っかかって指が切れちゃったぁ」
未桜がパッと掌を開き僕と淀鴛さんの方に手を向ける。
確かに彼女の右手には薄らとした切り傷があり、そこから赤い血が滲み出ていた。
僕と淀鴛さんは互いに目を合わせ、まだ出会って間もないが、「これは得たり!」とばかりに阿吽の呼吸で同時に頷く。
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