刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第15話 畏怖

　では今しがた起こった二人の超人的動きを振り返ってみようか。

　瞬間的にその場から消えたかに見えた亜孔雀だったが、決して瞬間移動して消えたわけではなく、想像を絶する脚力をもって地面を抉れるほど蹴り上げ、反動を加えた正に「目にも止まらぬ」速さで雲峡との距離を零にした。

　そしてご自慢の切れ味鋭い「悪魔の爪」を突き出し、当人は勝利を確信していたのだろうが、そうは問屋が卸さないとばかりの雲峡が、超スピードの攻撃をしっかりと見定め即座に反応し、悪魔の爪による攻撃を紙一重でかわすと同時に、落雷ばりの速さの鉄拳を上から繰り出し亜孔雀の頭を撃ち抜いたのだった。

　拳の一撃で惨めにも地面を舐めるような形となり、あまりの衝撃ゆえにピクピクとうつ伏せのまま痙攣を起こしている。

　勝負は雲峡の稲妻の如き一撃のもと呆気なく決したわけだが、これは敗北した亜孔雀が決して弱かったものではなく、仙女の雲峡が圧倒的に強過ぎたからに他ならない。

　悪魔を擁護するわけではないけれど、今現在の亜孔雀は仙人界で仙人の者どもと戦った時の2、3倍は強かったように見て取れた。

　だが、仙花一味に畏怖を覚えさせるほどの力を持った悪魔ですら、仙人界最強と謳われる雲峡の足元にも及ばなかったというのが事実であろう。

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