刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ4
また暫くのあいだ歩を進めていると、仙花が手を「パン!」と叩き何かを思い出して喋り出す。
「な~んか引っかかっておって気持ち悪かったのだが、云わねば成らぬことがあったのをたった今思い出したわい!蓮左衞門、九兵衛、それに雪舟丸よ聞いてくれ。儂はこの下総の地におる芥藻屑とかいう悪党共を滅ぼす事に決めたぞ」
聞いた蓮左衞門と九兵衛が言葉の意味を呑み込めずぽかんとするなか、居眠り侍の鼻風船が「パチン!」と割れ目を覚ます。
「仙花様、今しがた『芥藻屑を滅ぼす』などと聞こえたのですが、下手な冗談ではなく本気でございましょうな?」
「ハハハ。やはり寝てはいても外からの声は頭に届いておるようだのう…如何にも、儂は下手は冗談など言っておらんし、本気で芥藻屑を滅しようと考えておるよ」
雪舟丸の半起半寝説はあながち間違いではないと改めて確信した仙花。
「この身体は危険な文言や臭い音などに反応するよう鍛えておりますゆえ...あの芥藻屑が相手ならば、俺がひと暴れもふた暴れもできそうですなぁ。楽しみにしておきましょう...すぴぃ~すぴぃ~すぴぃ~」
周囲の空気感など全く意に介さず、話し終えると得心がいったのか眠りに入る雪舟丸であった。
「あの~、無知で申し訳ありやせん。先ほどから出てくる芥藻屑とは一体全体なんでございやすか?」
薬師の九兵衛は職業柄、薬や医療に関する知識は豊富だが世の中の情勢などにはとんと疎く、隣を歩く蓮左衞門に訊いた。
「う~む、悪党ということは知っておるが詳しくは拙者も分からぬでござるなぁ...」
蓮左衞門が困ったように頭を掻いているところで前を歩くお銀が話し出す。
「あらら、蓮さんもよくは知らないようだねぇ。芥藻屑ってなぁ下総国で恐れられている悪党集団の名だよ。その人数はざっと百くらいはいるって噂さ」
「ひゃっ、百!?えっ!?そんな大勢の奴らを滅ぼすのでごぜえやすか?こ、この五人で!?」
人数を聞き信じられないといった具合に取り乱す九兵衛。
「ハハハ、安心せい九兵衛。精鋭の儂らならばその程度の人数は楽勝楽勝!」
と笑い飛ばす仙花を見てお銀がため息をつく。
「...仙花様、お言葉ですが芥藻屑はそれほど楽な相手ではございませぬ。確かに百人のうち九割はものの数ではございませぬ。が、それを取りまとめる頭領の韋駄地源蔵(いだちげんぞう)という男は相当な手練れであると聞き及んでおります。さらには韋駄地の護衛役を務める凶暴な芥(あくた)五人衆なる者達もいるとかいないとか...」
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