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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ5

 お銀の話しから記憶の引き出しが一つ開いた蓮左衞門が喋る。

「韋駄地源蔵の名なら聴いたことがあるでござる。確か元々は武家の者だったらしいが、ある事件をきっかけに家と身分を失い、いつの間にやら地元から姿を消したとか。戦場で他の者を救った武勲は数多く、一騎当千の鬼神の如き強さから、『鬼武者源蔵』なる異名で呼ばれていたらしいでござるよ。その伝説的な男が賊の頭領とは....」

「おっ、鬼武者〜っ!?」

 大袈裟に怯える九兵衛は、大方の予想通り「うっかり」に加えたいそうな「臆病者」でもあった。

「『鬼武者』か...如何にも恐怖を誘う異名だわい....まぁ未確定な情報は兎も角、其奴らは下総の民を苦しめる存在なのは間違い無かろう」

 仙花がそう言い終えると、棒を肩にかけて走る一人の男が前方に見える。

「おっ、馬を使わず駆け足の飛脚とは珍しいでござるなぁ。各地を飛び回る飛脚なら何か知っているかもしれぬ。ここは一つ芥藻屑について尋ねてみるか」

 と言っているあいだに横をすり抜けようとする飛脚に蓮左衞門が声をかける。

「そこの者!止まるでござる!」

 不意に大声で呼び止められ、身体をビクッとさせてその場で足踏みする飛脚。

「お、お侍様が飛脚のあっしに何の用事でござんしょうか?」

 蓮左衞門の身につけているのは旅装束というより侍の格好に近い上腰にはしっかり帯刀している。尋常ではない荷物を抱えているとはいえ、何処からどう見ても侍にしか見えないだろう。
 飛脚はかなり警戒している様子だ。

 それを見て取った蓮左衞門は警戒心を和らげようと、白い歯を全開にしてニカッと満面の笑顔を作る。

「いやぁ仕事中に呼び止めてすまんすまん。な〜に大した用事ではござらんよ。この地で悪名高い芥藻屑についてちと訊きたくてなぁ」

「芥藻屑、ですか?....いぃっ!?そっ、そちらの方々に尋ねた方が早いかと!ででっ、ではあっしはこれにて失礼致しやすーーーっ!!!!」

 飛脚の男は青ざめた顔をしたかと思うと足早にその場を立ち去ってしまった。

「何だあの男は?脅したつもりはなかったでござるが....」

 残念そうに呟く蓮左衞門の肩を九兵衛が叩き小声で知らせる。

「れ、蓮さん、後ろ、後ろでやんすよぉ」

 蓮左衞門がサッと後ろを振り向くと、目の前には馬に乗り三度笠を被った眼光の鋭い浪人。その横には馬に乗ったその男に届かんとするほどの大柄な山賊風の男。さらにその後ろには同じく山賊風の男達十人が不規則に並び、仙花の一行を睨みつけていた。

 

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