刀姫in 世直し道中ひざくりげ 芥藻屑との戦 ノ2
仙花とお銀の二人が立つ川に架かった橋へ、蓮左衞門は荷物を背負い、九兵衛は仙花の旅装束の残りと下着を持ち、雪舟丸は言わずもがな居眠りしながら駆けて来る。
「仙花様~!ご無事で何よりでござる!」
「お助けになった娘はもう大丈夫でやすよ~!これをお召しになってくだされ~!」
「すぴぃ~、すぴぃ~、すぴぃ~」
辿り着いた蓮左衞門と九兵衛が息を切らすなか、雪舟丸だけは汗一つ掻いていなかった。
「おお!三人とも良いところへ参った。来て早々すまぬが転がっている屍を埋葬してくれんかのう。このまま放置しておけば橋を渡る民が怖がって近づけぬやも知れんからな」
九兵衛は屍を見て「ひゃっ!?」と驚き青ざめていたが、侍の蓮左衞門は屍を前にしても全く動じない。
「いやぁ、こわやこわや。これ全て仙花様が斬り捨てたのでござるか?」
「儂はただ一人を弓で射ったのみ。残りの四人はお銀がいともたやすく斬ってしまいおったわ。のう、お銀」
「フフフ、差し当たりお褒めいただいたと解釈させて頂きましょう。いずれにしても手前の助けなどなくとも仙花様お一人で片付いた一件であったのでしょうが...」
お銀がそう言っているあいだに、仙花は九兵衛より受け取った下着と旅装束を身にまとい、目を覆いたくなるような姿からようやくまともな格好を取り戻した。
蓮左衞門がテキパキと動き、九兵衛が嗚咽を我慢しつつ野盗達の屍を運び働いているなか、気付かぬまま居眠りを継続する雪舟丸を見てお銀が近づく。
「パチン!」
「ん?....」
「雪舟丸殿、皆が働いているのだ。少しばかり目覚めて手伝ったらどうなんだい」
雪舟丸の鼻ちょうちんを人差し指で弾いて鳴らし起こした。
辺りに目を配り何事かと状況を把握する雪舟丸。
「......この俺に雑用をさせようとは...よし、引き受けた」
「おやおや!?言ってみるもんだねぇ。まさか居眠り侍が手を貸してくれるとは思わなんだ」
お銀が驚くのも無理は無いだろう。
なんせ雪舟丸はここまで寝て歩き、昼飯を食っただけの体たらくだったのだから。
「どれ、よいさ」
あまりやる気の感じられない掛け声を出し、肩に屍を軽がると乗せ居眠り歩きをする雪舟丸。
「すぴぃ〜、すぴぃ〜、すぴぃ〜」
「ほんに器用な奴だのう」
呆れと驚きの入り混じる心境で仙花は呟いた。
そして屍の無くなった床板を眺め口をまた開く。
「まだ血がべっとり残ってしまっておる。お銀、二人でこれを綺麗にしようぞ」
受けるお銀が美しい笑顔で返す。
「それでしたら手前にお任せくださいまし。あっという間に血のつく以前より綺麗にしてみせましょう」
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