orutana2020のブログ

文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ15

 灯りが目に映った一行の面々の擦り減った気力は自然と昂り、筋肉が張って重くなった脚も軽やかになっていく。

 だが希望に満ちた一行を待ち受けていたものは、高揚する気分を奈落の底に叩き落とすような現実であった。

 あまり役立ちそうにない能力ではあるけれど、臭覚が人の何倍も強い九兵衛がそよ風に乗って微かに臭う異臭を察知する。

「んっ!?これはまさか......人の焼ける臭い。仙花様ぁ!あの場所は危険やも知れませぬ!御用心してくだされーーっ!」

 灯りを目に入った時より歩く速度を上げた仙花は一行と距離を少しばかり空けていたが、九兵衛の声は耳に届き後ろを振り返る。

「承知したーーーっ!」

 灯りの灯る場所へ近づくにつれ、その灯りが住居のものではなく、焚き火であることに仙花が気付いて呟く。

「焚き火か...周りに人影がいくつか見えるのう...くぅ、なんだ?この鼻に不快感を与える異臭は...九兵衛の忠告通り用心して近づくか...」

 ほぼ駆けていたと言っていいほどの速度を緩やかに落とした仙花は、背中の弓を外して左手に持ち、右手に矢を一本掴んで人影が視界の隅ギリギリに入る位置まで移動する。

 単独の身にもしものこがあってはならぬとばかりにお銀、蓮左衞門が後を追う。九兵衛と居眠り侍がかなり遅れていることも付け加えておこう。

 焚き火付近の半壊した倉庫へと辿り着いた仙花は、ひっそりと身を潜めて人影の様子を探ることにした。

 そこを覗くと見窄らしい身なりの人々が十人前後で焚き火を囲んでいるのが見えた...

 正に農民といった格好をしている一人の男が、商人に近い格好の男に話しかける。

「村長。命からがらなんとか生き残ったのは良いが、おら達はこれからどうすりゃあ良いんだかな?」

 村長と呼ばれた商人風で五十過ぎに見える男が困ったような顔をする。

「生きておればなんとでもなる...と言いたいところだがなぁ...状況が状況だ...取り敢えずは拐われた者どもをなんとかせねばならぬのだろうが...う〜む...」

 村長は考えが纏まっていないらしく言葉が上手く出て来なかった。
 どのようなことが此処で起こったのかは現時点では不明だけれど、このやり取りだけで此処が町ではなく村であること、ここに居る人々は悪党ではなく村人であること、そして村は荒らされほとほと困っているということが容易に推測できる。
 
 話しが進まぬ様子を眺めていた仙花が武器を収めて彼らの前へ進み出た。

「何かお困りのようだな。其方らの力になるゆえ詳しく話してくださらぬか?」

 

===============================
過去の作品はこちらにまとめてあります!
https://shouseiorutana.com
===============================