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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ30

 仙花の言葉に郷六が輪をかけて慌てふためく。

「仙花様に責任をとっていただくなどめっそうもございません。我ら村の者達なら一晩や二晩を飲まず食わずで過ごすことも耐えられますゆえ、どうか馬を斬るような御無体はおやめくだされ」

 必至の形相で止めようとする郷六だが、仙花の方は全くもって腑に落ちないといった顔をしている。

「だ~か~ら~、其方らは何も案ずる事は無いと言っておろう。仮にあの馬鹿将軍様の怒りが其方らに及ぼうものなら儂が全力で守る!...と言ってもそんなことは絶対に起こり得ないのだが...雪舟丸よ、其方は此度の件についてどう思う?...ん!?」

 一人では説得に多大な時間を要してしまうと感じた仙花は、助け舟になるような意見を求めて訊いたのだけれど、雪舟丸の目の前に居た筈の二頭の馬が忽然と消えていることに気を奪われた。

「馬の姿が見えんのう...雪舟丸、もしかして馬達は身の危険を察して逃げてしまったのか?...むむむ?其方、口をモゴモゴさせて何を食べておるのだ?」

 頬をリスのように膨らませた雪舟丸がそのままの状態で答える。

「モグモグ、馬は、モグモグ、逃げてはおりませぬ。モゴモゴ、既に、モグモグ、二頭とも捌き、モグモグ、その一部を拙者が、モグモグ、食している最中にございます。モグモグモグ...」

 そう言って藁の束の上に乗った見事なまでに綺麗で大量の馬肉を指さした。
 一瞬氷のように固まった仙花が気を取り直して口を開く。

「し、仕事が早すぎるにも程というものがあるだろうに...ま、まぁ初めからそうするつもりだったからそれは良いとしてだ。証拠隠滅のために頭は粉々にせねばと思っておったのだが何処へやったのだ?」

 口一杯に含んでいた馬肉をゴクリと飲み込む雪舟丸。

「あちらでお銀が鬼畜の如く燃やしておりますのでご安心を」

 と、また指差す方向には火遁の術によって馬の頭を豪快に焼き尽くそうとするお銀の姿があり、既に馬の頭は原形を留めておらず、単なる炭の塊と化していたのだった。

「ふぅ...これで任務完了...っと、念には念を入れて砕いておかなきゃねぇ」

「バキャッ!バキュッ!」

 真っ黒な炭と化した二頭の馬の頭は、お銀の強烈な蹴りによって木っ端微塵に飛び散った。

 視線を感じたお銀がキラキラと輝く爽やかな表情をして仙花に手を振る。

「仙花様〜!これで物的証拠は無くなりましたのでご安心を〜♪」

 お銀に軽く手を振り返して応え、若干引き攣った笑顔でもって郷六に告げる仙花。

「わ、儂の家臣どもは仕事が早くて助かるわい...郷六、こうなってしまっては致し方あるまい。開き直って腹一杯馬肉を食べ元気をつけようぞ」

 

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