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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ44

 一方、お銀の次に蛇腹への侵入を成した得た雪舟丸。
 彼は侵入するまでの勢いこそあったのだが、今の今まで西門を潜って最初の家屋付近で進めるべき脚を止めいていた。
 門番以外の敵を一人も葬らずに、である。

 状況からしてまた居眠りでもおっ始めたのだろうか?などと想像してしまうが、敢えて彼の名誉のために云っておくと、決してそのような呆れる行為など断じて無かった。

 敵が就寝中の身であり、寝込みを襲えば楽々一掃し数を減らすことのできる機会をみすみす逃してしまっている雪舟丸。

 何故、宮本武蔵との壮絶な勝負に競り勝ち、「超」か「極」の一文字が頭につくほどの達人である彼が身動き一つせずデクの棒のように立ち止まったままだったのか?

 その理由は雪舟丸らしくもなく、または雪舟丸らしいと云えるものであった。

 睡眠中の無防備な人間を襲うことに躊躇など微塵も持ち合わせぬ暗殺者や忍者ならばともかく、変人、否、変態である...んまぁ、どちらとは云いきれないが取り敢えず人格は別として、「侍道」を真っ直ぐにひた走る彼は敵の寝込みを襲うことを紛れもなく躊躇し、珍しくも長々と今まで葛藤した結果である。

 石のように動けなくしてしまった彼を救った?のは、奇しくも仙花が見張りに逃げられ、中央社上階から響き渡った侵入を知らせる鐘の音であった。

「ふぅ...味方の侵入がばれたか...しかしこれで敵も起きてくれよう」

 雪舟丸は味方の侵入を知られたことに気落ちするどころか安堵の表情を浮かべた。

「さぁ、芥藻屑の賊ども。早く斬られにまんまと起きて来るがいい...」

 彼はそう呟き中央へ向かいゆっくりと歩き出した。


 雪舟丸の行動を「静」とするならば、蓮左衞門の方は圧倒的に「動」だったのかも知れない。

 彼は「侍道」とは似て非なる「武士道」魂なるものを持ち合わせている。
 
 雪舟丸とほぼほぼ同様に、敵の寝込みを襲うことを躊躇い実行に移すことは無かった。
 ただ、雪舟丸が石のように固まり葛藤し続けたのに対し、蓮左衞門は迷うことなく韋駄地源蔵が居るであろう中央社を目指し汗だくでひた走る。

 この二人の取った行動をお銀が耳にしたなら「フン、情け無い殿方どもねぇ」などと鼻で笑われそうなものだが、此度の戦が後世に語り継がれる日が来ることがあるならば、彼らの取った行動は真に正解だったとも云えよう。

 と、語っているうちに蓮左衞門が中央社の門前へと辿り着く。

「ハッハッハッ!着いた!着いたでござる!今回は是が非でも武勲を挙げさせてもらおう。出て来い!芥藻屑の賊どもーーーーーっ!!」

 

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