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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ52

 正面に剣術の極達人を見据えた可惜夜千里(あたらよせんり)が薄い笑みを浮かべる。

「とんでもないお人ですねぇ、あなた。たった一人でこれだけの人間を殺せる方は早々いませんよ...でもまぁ、これくらいの事なら僕でもやってしまえそうな気がしない、でもないですが...」

「...ほう、少年。それは大きく出たものだな」
 
 少年?の物言いに表情の変化に乏しい雪舟丸が微かにニヤリとした。

「あっ、因みに僕は若く見られがちですがぁ、少年と呼ばれるような年齢ではありませんよ。二十歳の立派に成人した大人ですのでその辺お間違いのなきよう」

「......それを聞いて少しばかり安心した。流石の俺も少年を斬るのは些か抵抗があるのでね。っと、すまん。勝手に無謀な闘いを挑んでくるものと判断してしまったが、相違はないか?」

 美少年ではなく美青年であることが発覚した可惜夜千里がニコリとして応じる。

「ええ、あなたに挑むことに相違はありませんよ...あっ!そうだそうだ。あなたのような達人とやり合うからには正式に一対一の決闘を申し込ませて貰いましょう。ちょっと待ってて下さいね」

 可惜夜千里そう言って背後に控える芥藻屑の賊達へ向けて告げる。
 
「皆さん!命懸けのお仕事ご苦労様でした。ですが此処より先のこの場はこの可惜夜千里が預かります。皆さんにおいては中央社の加勢に行くなり、蛇腹を捨てて逃げ出すのもありかと存じます。兎にも角にも居てもらっては足手纏いなだけですのでとっとと消えて下さ~い♪」

 最後の方のあまりな暴言に族達は一瞬固まった。が、一番近くにいた者が恐る恐る口を開く。

「へ、へい。お言葉に甘えてそうさせてもらいます」

 その者は場を駆けて去り、周囲の者達も釣られるように二人の対峙する場から姿を消した。

「うんうんよしよし。これで心おきなく決闘に没頭できますねぇお侍さん♪」

 今から生死を分けようという決闘に挑む者のとはとても思えぬほど陽気な可惜夜千里。

「おもしろい男だな...折角だ、俺の名は阿良雪舟丸(あらせっしゅうまる)。剣術と睡眠をこよなく愛す者。と、言ったところだ」

 五十数人を倒した後だというのに雪舟丸の顔には疲労の色は見られない。
 片や寝起きから未だ一戦もせず元気の有り余る可惜夜千里が応じる。

「へ〜、剣術と睡眠?ですかぁ。なるほどねぇ...っと、僭越ながら可惜夜千里と申します。そうですねぇ...雪舟丸さん風に言うならば、『人斬りを極めんとする者』といったところでしょうかぁ...」

 

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