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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ53

 飄々と喋る可惜夜千里に若干調子を狂わせられた雪舟丸だったけれど、持ち前の絶対的な集中力でもって軽くいなす。

「...くく、是非ともそうあって欲しいものだな。ときに、念のため聞いておくがお主、芥藻屑の人間ではないのだろう?」

 雪舟丸の意外な問いかけに対し特段驚く様子を見せない可惜夜千里が、「パンパン」細やかな拍手をと鳴らす。

「御名答で~す♪流石は雪舟丸さん。と、言いたいところですが僕の身なりを見れば一目瞭然ですねぇ。芥藻屑の一味であることを示す物も身につけてませんし、何をおいてもこんな美青年が芥藻屑のようなやる事も顔も汚い連中と一緒なわけないですもんね♪まぁ、簡単に説明しますと、僕はたまたま数日泊まらせて貰った客人みたいな者なんです♪」

 可惜夜千里は少年さながらの屈託のない笑顔をして見せた。

「...分からんな...なぜ客人扱いのお主が芥藻屑のために命を賭けた決闘をするんだ?」

「ハハハ、やだなぁ雪舟丸さん。僕はこれでも受けた恩はしっかり返す人間なんですよ。たった数日とはいえ、飯と宿を世話になった分は働かないと決まりが悪いってもんでしょう」

 まるで友人にでも話すような口調で喋る可惜夜千里。彼の生まれ持っての性分か、二十年の間に培った彼なりの処世術かは定かでないが、雪舟丸から僅かでも殺気を奪うに十分な人柄と云えた。

「お主と話していると気が削ぎれて斬る気になれぬ。このまま黙って俺の前から消えては貰えぬか?」

「あっ!?これはこれは申し訳ありません。そんなつもりで喋ったんじゃないんですよ~...そうだなぁ...じゃあ、これでやる気を出して貰っちゃおうかな」

「ザザッ!!」

 言い終わるや否や、彼は腰の両側に帯びた鞘から目にも止まらぬ速さで二本の刀を抜き放ち前面で何度も高速回転せ、彼の伝説の二刀流剣士宮本武蔵を彷彿とさせる構えを取った。

「どうです雪舟丸さん。少しは『殺る気』を出して貰えましたか?と言うか、その気にならなければいくら貴方でも死んじゃいますよ~」

 口調はさほど変わらなかったが、先ほどまでののほほんとした陽気な表情は身を潜め、集中力を高め出したのか真剣な表情になる可惜夜千里。

「...口先だけでないことは把握した。だがお主の年齢から察するに、未だ剣士としての絶頂期には到達しておるまいて...最後にもう一度だけ訊く。今日のところは引き下がってはくれまいか?」

 雪舟丸は可惜夜千里の素早い所作に感銘を受け、一剣士として彼の絶頂期に勝負したいという期待を込めて言ったのだが...

 

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