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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ48

「あっちにはてめぇらの仲間が居るんだな?」

「...はて?何のことやら。せいっ!」

 鷲尾雷角の問いに対して適当な返答をした仙花が風鳴りを振りまた一人の命を断つ。

 と、西の騒動に目を奪われたままの鷲尾雷角の横へ、白の羽織を着た侍風で顔の整った少年と云っても差し支えないほど若い男が現れた。
 少年に目を向けようともしない鷲尾雷角が彼の名を呼ぶ。

「千里か...」

「ええ、天才剣士の可惜夜千里(あたらよせんり)が参上しましたよ」

「ケッ!」

 己から「天才剣士」とさらりと言う少年を鷲尾雷角は嫌っているようであるが、その言葉自体を否定しないところを見ると実力は確かなのかも知れない。

「雷角さん、彼方の方は僕に任せてください。まぁこちらも手強い相手の様ですが...韋駄地様が加勢に来るまで精々持ち堪えてくださいね」

「...てめぇ。朝一から生意気な口をきいてくれるものよ。まったく目障りな顔だ!とっととと行きやがれ!」

「は~い♪」

 少年は美しくも屈託のない笑みを見せ、戦場にはおよそ相応しくない軽い返事をして西へと跳ねる様に走って向かった。

 このやり取りの間にも仙花と蓮左衞門は刀を休ませず、向かって来る敵をバッサバッサと斬り捨てる。

 二人で倒した敵の数はこの時点で既に三十人を超えようとしていた。
 後ろを振り向かずに仙花を心配する蓮左衞門が声をかける。

「仙花様!大丈夫でござるか?」

「儂は大丈夫。というか、闘うことに段々と嬉々たるものを感じておるくらいだ」

「...そっ、それは頼もしい」

 元気な蓮左衞門の表情が僅かに曇り、いつもと違う歯切れの悪い返しをした。

 今、仙花が斬っているのは悪党といえども人である。つまり、彼女の言った言葉の裏には人斬りを楽しめているという意味も含まれており、蓮左衞門は仙花の強さに嬉しさを覚える反面、十六の若い少女の心中に若干の不安を感じていた。
 しかし、その考えは平穏で正常な状態でこそのものである。こと戦に於いては殺るか殺られるかの命懸け、人情云々はかえって人を斬る腕を鈍らせてしまうばかりかその所為で命すら落としかねない。
 蓮左衞門は頭を横に強く振り「無用な考えは捨てろ!」と己に言い聞かせ、また幾度となく敵を倒したのだった。


 一方、鷲尾雷角による命を受け、逃げる囚人を走って追うは忍者の紅樹である。

 一般の民が脚力にも優れる忍者から逃げられる筈もなく、あれよあれよという間に最後尾の女が追いつかれようとしたその時!

 紅樹の前に颯爽と現れ立ちはだかるは、里のくノ一頭領にして「妖の銀狐」とも呼ばれる容姿端麗なお銀の姿であった。

 

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