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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ54

「いやいや雪舟丸さん。人の実力を推し量るのは構いませんけれど、現時点で僕の実力が絶頂期かどうかを勝手に決めつけられるの心外というものです。さもすれば僕は早熟で今が絶頂期かも知れませんし、そもそも貴方に負けるつもりで決闘を申し込むような馬鹿でもないですしねぇ。此処はお互い腹を決めて真剣勝負といきましょう」

 容姿とは裏腹に、強情な若者の態度に明るみを増した天を仰ぐ雪舟丸。

「ふぅ...ならば、致し方あるまい...」

 一度納めた刀をゆるりと鞘から再び解き放つ。

雪舟丸さん、感謝しますよ。貴方ほどの手練れと決闘できたことは、今後の僕の誉れとなりましょう...いざ!尋常に勝負!」

 雪舟丸が刀を解き放った瞬間、彼の周囲の空気が一変した感覚を覚えた可惜夜千里が、己に気合いを入れる意味合いを含めて声を張った。

 二人の発する覇気によってヒリヒリする空気の中、互いが相手の目の動きや息遣い、そして五体全ての動きに注意を払い出方を窺う。
 
 雪舟丸は刀を前方に構えたまま山の如く微動だにしない。可惜夜千里は摺足で少しずつ横へ移動するも攻撃を繰り出せずにいた。

「どうした?俺は先手を譲っているんだぞ。攻めて来ないのか?」

「いやぁ。貴方の隙を探しているのですが...いざ刀を構えて貴方と対峙して分かりました。貴方、隙が無さ過ぎです」

「...立ち会った途端にそれを感じ取れるのなら、お主は十分非凡というものだな...しかし、いつまでもジッとしているのは俺の性に合わん。いくぞ」

「ヒュン!」

「ガッキィン」

 話し終えると同時に予備動作のない、否、実際はあったかも知れないが、「神速」ゆえに腕の動きを目で捉えるのも難しい一撃を入れた雪舟丸。

 ある意味驚くべきは可惜夜千里の方だったか...不意に襲った神速の上段斬りを恐るべき反射神経と瞬発力により、両腕の刀を交差させ見事に防いでしまったのだから。

 防がれたままの形で力を緩めない雪舟丸が口を開く。

「...何年振りだろうな。俺の初手が防がれたのは...」

「いやぁ、ギリギリでしたけどねぇ。お陰様で一瞬肝が冷えましたよ。でも雪舟丸さん。貴方、そんな細身で意外にも力が強いんですねぇ」

 雪舟丸の表情には余裕があるが、可惜夜千里の方は本当に肝を冷やしたのだろう、さほど余裕のある表情には見えない。

「此処まで修羅場を幾多の修羅場を潜り、長年積み重ねてきたものがあるからなっ」

「キィン!」

「っ!?」

 雪舟丸が僅かに刀を浮かせ神速の剣を打ち込んだその瞬間、可惜夜千里は後ろへ飛び退がり間合いを取ったのだった。

 

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