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文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ61 仙水(せんすい)

 そんな理由で寝起きに食事を摂るのは稀であった。その代わり、仙人達はこれまた特別な味と成分を含んだ「仙水」と呼ばれる冷水を飲む。

 仙水ならばたった湯呑み一杯分の量で満腹感を得られるため、たぷたぷになる腹と味はともかく仙人界では至って重宝されていた。

「ゴクゴクゴク...ぷはぁ~いつまで経っても不味い水じゃぁ」

 僅かな時間で一気呑みした割に文句を垂れる真如。しかし言葉とは裏腹に彼女の顔は「不味い」というより「美味い」を表現していた。不味い食べ物でも食べ続ければクセになるものがたまにあるけれど、仙水は正にその部類に入っているのかも知れない。

 さて、仕事の無い仙人達は長い一日を果たしてどのように過ごしているのだろうか?

 人間界において「仕事」や「労働」は生きる為に必要であり、費やす時間は人生の限られた総時間の中でかなりの割合を占め、ほとんどの人々は仕事を追いかけ、時には追い詰められるといった楽しくもない時間を過ごし搾取されてしまう。
 だから、極小数で賛否両論はあるだろうけれど、「仕事にやり甲斐や楽しみを見出した者」や、「仕事が趣味と言っても良い者」などの話を聞くと語り手としては羨ましい限りなのである...

 と、「仕事」に関しての考察などを述べてもみても、疲労は癒されないし楽しくもない。
 そもそも物語と関係ないではないか。

 仕事云々の話はさておき、この天空の島にある仙人界にて悠々自適に過ごす仙人達の生きる目的とは?なんぞや?

 恐ろしいことに本当のところそんなものはありもしない。ということは無きにしも非ずといった具合であろう。良く分からないが...

 少なくとも聖天座真如には一日をどのように過ごすかという計画らしい計画は、ここ百五十年ほどの長いあいだ皆無であった。

「今日は釣れぬ魚でも釣りに行くかのう」

 訳のわからぬ大きな独り言を呟いた真如が釣竿を一本持ち、「釣れぬ」と言いながらも釣れたとき用の竹で編んだ籠を一つ持ち、にこやかな顔をして意気揚々と家を出て行った。
 
 空気は薄いが自然の景観と仙人達の奇妙な建造物が上手い具合に溶け込み、周りを見渡せば絶景のオンパレードが続く道を気持ち良さげに歩く真如。

 そんな彼女に横から年寄りの出す二つの声が届く。

「真如〜、今日も釣果のあがらない釣りをするんかい?」

「全くもって飽きんもんじゃな〜」

 聞いた真如が声の主である二人の仙人へ朗らかに返す。

「そうじゃ〜、今日も釣りじゃ〜。百年年も将棋を打ち続けるあんたらに言われたくはないがのう」

 

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