orutana2020のブログ

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一輪の廃墟好き 第63話 平凡

 大人も大人の35歳となった現在では、刑事という特殊な職に就きベテランの粋に達しているであろう淀鴛さん。

 さっき初めて会ったばかりなのだから当たり前なのだが、彼がここまでの30年間をどのように過ごしてきたかのかを僕は知らない。

 だが僅かな時間彼と接した感じからして、容易でない、困難な人生を歩んで来たのだろうと、洗練された顔付きや仕草が物語っていたような気がする。

 きっと淀鴛さんに面と向かって、「大変な人生だったことを察します」などという言葉を投げかけても、「な〜に、俺の人生なんて平凡なもんさ」なんて返ってきそうだけれど...

 僕は極々稀に考えるのだけれど、たまに聞く「平凡な人生」という言葉の中には、「平凡」という平凡な言葉とは裏腹に、想像以上の苦労が秘められていると思えて仕方がない。

 だってそうだろう。

 人がこの世に生を受け、一瞬で消えて無くなるならまだしも、何十年という月日を厳しいこの世界で過ごすわけだから、少なからず個人差はあれど、一人一人に必ずや過酷な時は存在するわけで、誰一人として平坦で平凡な人生を歩んでいるはずもないと思うのである。

 だから「人生なんて平凡だった」などと言えるのは、そんな苦境を乗り切った人だか言えるのであって、もの凄く強い人なのだなと思ってしまう訳で...

 なんてことをコロコロと思考の変わる頭で考えながら、焼死体のあった現場に事件のヒントになり得る物は無いものかと、釜戸の周囲を隈なく探索したのだった...

 

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