orutana2020のブログ

文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

一輪の廃墟好き 第107話 豆腐

「こ、これは...ことのほか美味いな...」

 井伊影村地産の大きめな椎茸は、良い意味で椎茸なんでどれも同じであろうとたかをくくっていた僕の予想を超ええ、そのじんわり滲み出る味と食感によって舌に個性を訴えて来た。

 椎茸のおかげでイラついていた気分は一転し、僕は自然に次なる食材に手を伸ばす。

 気を抜いて箸で崩れてしまわぬよう慎重につまんだ食材は、これもすき焼きとくれば外すわけにはいかない庶民の味方、はるか昔に唐から伝わった豆腐である。

 日本人であればほとんどの方が御存じのとおり、自然が直に生み出す椎茸などとは違い、人の手によって作り出される食材であるけれど、木綿豆腐、ソフト豆腐、絹ごし豆腐、充填豆腐などの四種に大別され、やはりそれぞれに特徴があるらしい。

 すき焼きに入れる豆腐を選択するなら木綿豆腐か絹ごし豆腐が妥当なところだろうか。

「おほっ、やわいやわい」

 豆腐は冷ややっこに醤油をかけてストレートに食べるのも好きだが、すき焼きに入った豆腐はまた格別に美味いと感じるのである。

 そして椎茸も豆腐も、いや全ての食材がといだ生卵と悩ましくも絡み合い、他の料理では中々味わえないハーモニーを醸し出すのだ。

 一時的にでも乙女の恥じらいを捨てさった目の前の助手は、僕が食材の味を楽しんでいるあいだに糸こんにゃくをそうめんを食べるがごとく、ズルズルと啜っているのだった...

 

===============================
過去の作品はこちらにまとめてあります!
https://shouseiorutana.com
===============================