一輪の廃墟好き 第108話 シンクロ
「牛肉爆食いズルズル娘」は縛らく放っておくことにして、僕が牛肉以外の素材すべてを味見し終えた頃。
「お待たせしてすみませんねぇ、生二つと白ご飯でございますぅ」
待ってました!生若女将(仮)! 僕は心の中で歓喜し小躍りしていた。
すき焼きの食材を次々に通したカラカラの喉が、さっぱりとした喉越しのものを今や遅しと待ち望んでいたのである。
「ありがとうございます。ほれ、君の胃袋も少しは落ち着いた頃だろ。ビールで乾杯して仕切り直すぞ」
「はぁい♪牛肉先に食べちゃってごめんなさい。許してね♪」
未桜は冷えた生ビールの注がれたジョッキを頬に当てつつ、可愛らしい少女のような表情で謝罪して来た。
「構わんさ、とっくに許している。それよりここからは呑んで食べて一日の疲れをいやそうじゃないか。さぁ乾杯だ!」
「さすがは名探偵一輪♪かんぱ~い!♪」
僕達はジョッキを「チンッ!」と勢いよく突き合わせ、互いが競うように「ゴクゴク」と一気に生ビールを呑み干してしまった。
「ぷぅはっ!美味い!」
「ふぅぅ、最高~!♪」
追加の料理をテーブに置きながら、僕達の様子を見ていた若女将(仮)が微笑まし気に言う。
「あらあら、二人とも凄い呑みっぷりですこと。生を二つ追加ということでよろしいかしら?」
「「お願いします!!??」」
僕と未桜はここに来て初めて、寸分も違わぬシンクロ率を感じるほど息が合ったのだった。
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