一輪の廃墟好き 第115話 ヒロイン
いくら泥酔してしまっているとはいえ、この甘ったれた成人女子を二階の部屋までおぶってやることはいささか不本意なところである。
とは言え、このまま彼女を放置していては漏れなく女将(確定)さんの迷惑となしまうだろう...
時間も無いことだし。
「えぇい、仕方のない奴だ。ほれ、今回だけは僕の背中に飛びつくがいい」
僕はこう見えて人に迷惑かけることを善しとしない人間である。
身内の醜態をこれ以上さらすのも嫌だし、放置しておく訳にもいかなかった。
「さっすがぁいち...うっぷ」
未桜が起き上が様に何か言おうとした瞬間、あまり聞きたくはない嗚咽を漏らし咄嗟に手で口を塞いだ。
「いや待て!吐くなよ!ここで絶対に吐くなよ!」
「よろしければこれをお使いください!!」
いいタイミングで食器を引き揚げに来ていた女将さんが、未桜の窮地を察して差し出したのは、残飯を入れるためのボウルであった!
「グッジョブ!女将さん!」。僕は心の中で機転を利かせてくれた女将さんを賞賛する。
「ウロロロロロロ...」
今現在では他に候補のキャラが存在しないため、目下のところ物語の「ヒロイン」たる彼女は完全にそのポジションを喪失した。そう、またもや乙女の恥じらいとともに...
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