一輪の廃墟好き 第130話 違い
そこから淀鴛さんは呟くようにひっそりと、現段階で知り得た事件の様相を教えてくれた。
被害者はこの家屋に30年以上もの長いあいだ住んでいた老夫婦の二人。夫も妻も共に60代で、農家を営んでいたとのことである。どうやら井伊影村に親族は居ないらしく、二人に子供が存在するのかどうかは調査中らしい。
死因はどちらも刃物による致命傷での出血多量。事件が発覚したのは本日早朝の6時半頃、第一発見者は近所で養鶏場を営んでいる仲の良い女性の友人で、生まれたての卵をお裾分けしに訪れたところ、開けっぴろげの玄関から被害者である夫の呻き声が聞こえて来たのだという。
友人が慌てて家の中に上がり込み、呻き声のする寝室へ向かうと、血だらけになった夫が腹ばいになって倒れており、妻の方は既に絶命していたのか、同じく血だらけになりながらピクリとも動かなかったらしく、夫の方に何度も声を掛けたが喋ることもままならない状態で、呻き声が止まって直ぐに息を引きとったそうだ。
僕が写真立てに入った老夫婦の写真を見て息を呑んだ理由。それは殺された老夫婦が、昨日の日中、風車を壊して困っていた僕達に手を差し伸べてくれた二人だったからに他ならない。
会話した時間が僅かだったとはいえ、全く顔も知らないような人物が殺されるのとはわけが違った...
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