一輪の廃墟好き 第83話 頷く
さらに質問を続けていると、最も欲しかった情報、つまりは30年前に淀鴛家で起きてしまった悲惨な事件の一角に迫ることができたのである。
それは30年前の事件当時、警察の調べでは「自殺」だと断定されたのだったが、この老婆の霊は、「30年前に若い夫婦は自殺されたのですか?」の問いに対し、俯き加減で首を小さく横に振ったのである。
初めて出会った人、それも幽霊の反応を鵜呑みにするのも如何なものかと思うけれど、僕は何故だかこの老婆の霊は信用に値するものだと踏んでいた。
無論、老婆の霊は話すことが出来ないので細かい情報を聞き出すことは不可能だし、それより何より時間が...
「助手よ、もうそろそろ時間的にかなりやばい。残念だが次の質問で最後にするぞ」
「...だねぇ、了解。じゃあ最後の質問をどうぞぉ」
辺りはより一層暗さを深く増しており、ケチ臭い考えかも知れないけれど、帰りの移動時間を計算に含めれば、民宿の決められた夕食時間にギリギリ間に合うかどうかという時間帯までに及んでいた。
腹も減ってきたことだし、時間を守れなければ民宿の方にも悪いではないか...
無意味とも言えたけれど、僕は敢えて顔を近づけ最後の質問を未桜に耳打ちした。
未桜が老婆の霊と視線を合わせて最後の質問をする。
「淀鴛龍樹さんのご両親を殺害した犯人は、井伊影村の住人なのでしょうか?」
老婆の霊は哀しげな面持ちのまま、じんわりと頷いたのだった...
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