orutana2020のブログ

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一輪の廃墟好き 第129話 心のケア

 彼女には気の毒なことをしてしまった...

 「気配り」などと軽く云ってしまったけれど、いくら成人に達しているとはいえ彼女はまだ23歳。長寿国の日本において彼女の年齢はどう見積もっても若い部類にあたる。

 根拠不明な胸騒ぎに気を取られていたことは言い訳にもならないし、僕の配慮不足という落ち度以外の何者でもなく残念極まりないのだけれど、現在の状況を鑑みれば悔やんでいる場合ではないことも確かだった。

 だからと云ってはアレなのだが、負の衝撃を受けてしまった未桜の心のケアに関しては、のちほど丁寧に施すとして、僕は傍目にも殺人事件であることに違いないであろう現場の検証に集中するよう努めた。

 今回は別段、誰からも調査の依頼は受けていないけれど、妙な胸騒ぎが探偵としてというか僕自身の好奇心を突き動かし、淀鴛さんのお陰で現場の調査をすることとなったわけである。

 僕は早々と寝室を一通り見渡し、箪笥の天板に置かれた写真立てに目が止まり、近づいて手に取って眺めたところで息を呑む。

 念のため確認しなければ...

「淀鴛さん、今回の事件は他殺と思って差し支えないでしょうか?」

 周囲の警察関係者には聞こえないように小声で尋ねた。

「十中八九、いや違うな、99%他殺の線で間違いないだろう」

 

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