一輪の廃墟好き 第140話 蘇生
車が再発進して5分と経たないうちに国道へ入ると、車道を走る車の数が一気に倍増、否、比較にならないほど増加した。
淀鴛さんも「有言不実行」なことにはならず、山道での荒々しくアグレッシブな運転が嘘だったかのような安全運転を継続してくれた。
かくして、僕たち三人は目的地である市立病院へ無事かつ時短で到着することができたのである。
自動ドアを通って病院の中へ入ると、淀鴛さんが僕と未桜にロビーで待っているよう促し、単独で窓口へ赴いた。
暫くして真剣な表情をした淀鴛が僕たちのところへ戻るなり言う。
「二人の遺体は安置室に移されているらしい...あわよくばどちらか一方でも助かってくれていれば良かったんだけどな...」
事件現場で聞いた話では、被害者夫婦は現場から心肺停止の状態で救急車によって運ばれたらしい。心肺停止の人が病院で息を吹き返すようなことは稀だけれど、可能性としては当然ゼロではないから少しは期待していたのかも知れない。
もし仮に、二人のうちどちらか一方でも蘇生していれば、事件解決への糸口は一気に広がっていたことだろう。
だが世の中はそんなに都合良く回らないし甘くもない。
僕たち三人は遺体安置所へと続く長い廊下を、ずっと無言のまま歩いて進んだのだった...
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