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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第117話 気絶

 「早うせい」と言わんばかりの顰めっ面で睨みつける仙花の前に、天心が「こやつには侘び寂びというものが無いのかと」思いつつ懐から握り拳大の瓢箪を取り出す。

 

「ほれ、これは『超覚水(ちょうかくすい)という貴重な代物でな。まずは呑み干すがいい...なぁに心配はいらん、少々苦味はあるが身体の毒にはならんから安心せよ」

 

 黙って瓢箪を受け取った仙花が迷うことなく専を空ける。

 

「ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ」

 

 三回ほど喉を鳴らして「超覚水」を飲み干すと、酒を呑んだが如く「ぷはぁ」と息を吐く。

 

「...........」

 

「.......お主は味覚が馬鹿なのかな?こいつを呑んだ者はそのあまりの苦さに気が狂ったようにもがき苦しむのが常なんだが...」

 

「...そうなのか?お主が言ったように少しは苦かったが、別に美味くもなく不味くもなかったぞ」

 

 実は彼女があっさりと呑み干した「超覚水」は、人によっては気絶するほど苦味があるもので、天心は仙花にちょっと仕返しをしてやろうと悪戯心が出て意地悪をしたにだったが、彼の期待に反して全くもって動じない彼女であった。

 

「それより、呑み干したにも関わらず儂の身体には何の変化も現れなんだが、本当にこれで仙女になれたのか?」

 

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