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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第95話 変顔

「うむ、どんな試練でも万事乗り越えてやる。早う言え」

 天心がいつもの奇妙な笑い声をあげず、ニヤリと不敵な笑みを浮かべ懐から一つの紅い小さな盃を取り出した。

「まずはその場に正座し、この盃をを両手でかざすように持つのだ」

 素直に天心の言うことを聞き、その場の凸凹な地面正座をした仙花は天心より盃を受け取った。

「ケッケッケッ、結構結構、存外素直な一面もあるようだ。では、その盃の酒を注ぐゆえ前に差し出せ」

 何の反論をすることも無く、仙花は黙って怖いほど素直に盃を差し出した。

 掌サイズの盃に、何処から取り出したか分からぬ瓢箪から天心がキラキラとした酒を溢れんばかりになみなみと注ぐ。

「良いか。これからオレが『良し』とするまでこの酒を盃から一滴も溢すなよ。無論、ただじっとさせていてはオレがおもしろくない。お主に触れることは無いが、様々な事象を起こすゆえ耐え忍んでみるがいい。言わずもがな、盃の酒を一滴でも溢せば試練はそこで終わる。心せよ」

「...承知した」

 終始落ち着きを見せる仙花は試練の厳しさを考えず返事をした。

「ではこれより第二の試練の始まりだ」

 天心はそう言うと、仙花の淀みない眼に顔を近づけ、平安時代の終わりくらいから始まったとされる「にらめっこ」でするような変顔を次々と繰り出したのだった。

 

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