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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第132話 留守

 特にこの日は、早朝から田畑に霜が降りるほどの低温となっていた。

 

 出発の準備を整えた清兵が、見送りをしようと佇む椿の肩を軽く「ポン」と叩く。

 

「そんじゃあ椿。おら達が留守の間の家と梵のことは任せたぞ」

 

 長女の椿は未だ幼さの名残りはあるものの、しっかり者で留守を任せられると清兵は確信していた。

 

「うん!家のことも梵のことも引き受けた。おっとうとおっかあこそ気をつけて行ってらっしゃい」

 

 椿は親に心配をかけぬよう、ハキハキと元気な声でそう応えた。

 

 そして清兵が大八車の取手を掴み持ち上げ、妻のトキが後方から荷を支え押すような形で、二人は隣町へ向かい進み始めたのだった。

 

 人の足と荷車によって長い年月をかけて踏みならされ、雑だが固く舗装された田舎道をやや足早に歩み、二人の姿が岸壁を曲がり視界から外れたところで椿は家の方を振り向いた。

 

 ここで椿は着物の裾を引っ張らていることに気付く。

 

「ねぇちゃんさむい、はよぉ家ん中に入ろ...」

 

 小さな梵が上唇に届かんとするほどの鼻水を垂らしながら切望した。

 

「うん、入ろ入ろ。家ん中でお手玉でもして遊ぼっか」

 

 椿は弟の梵に向かって和かに笑い、梵の面前に後ろ向きで屈む。

 

「ほれ、おんぶしてやるけぇ早よぉ乗り」

 

「うん!」

 

 梵は飛び乗るようにして椿の背に乗り、二人は両親の留守にする家の中へと入って行ったのだった...

 

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