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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤 第130話 健気

 家族の全員がツギハギだらけの着物を着用していて、何処からどう見ても貧乏な緒方家ではあったが、家族全員が仲睦まじく日々笑顔は絶えなかった。

 

 そんな緒方家が迎えた厳しく寒い大晦日の昼飯時に、愛する家族に少しでも気持ちの良い正月をと思い至った清兵が妻に提案する。

 

「なぁトキ、飯を食ったら二人でで隣町まで野菜を売りに行かんか?明日は正月だ。倉庫に貯蔵してある大根やら芋やらを売ってちょいとばかり贅沢してもバチはあたるめぇ」

 

「...そうねぇ。今年は野菜や米も豊作だったから、正月くらい美味いものでも食べましょう。それに椿や梵に新しい着物も買ってあげたいしねぇ」

 

 二人の会話を聞いていた椿が割って入る。

 

「おらぁ贅沢なんかせんでもいいよぉ。おっとうとおっかあが元気にしてくれてるだけでおらは満足だぁ」

 

「ほんにあんたは嬉しいことを言ってくれるわねぇ。でも椿、育ち盛りのあんたは前より大きくなってるから、今の着物じゃ肌が出過ぎて寒いでしょうに」

 

 実際のところ、椿の着ている着物は肘と膝から先が露出しており、寒い冬を越すには明らかに厳しそうに見える。

 

「寒さなんか平気だよぉ、おらぁ痩てるけど身体は丈夫な方だし」

 

「椿、金のことは気にせんでもいい。倉庫にたっぷりと野菜があるからそいつを売ればお前の着物くらい大丈夫だ」

 

 健気な娘にそう言って聞かせる清兵であった...

 

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