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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第140話 寒気

 人形の表情に色々求めるのはのは筋違いなのかも知れないけれど、行商人から受け取った女の人形の顔には、可愛らしさや愛嬌など全くと言っていいほど感じられず、逆に無表情なその顔は冷徹に見え、何処からどう見ても不気味な人形にしか見えなかった。

 

 だが清兵とトキの二人は、我が子の椿がどれほど喜んでくれるものかと、たいそう期待していたものである。

 

 二人に人形を授けた行商人は、清兵に人形を渡すといつの間にやら風のように姿を消していた。

 

 帰りが遅くなってはいくまいと、二人は残り買い物や物々交換を手際よく済ませ、急いで大八車に詰め込むと、不始末村への帰路を進み始めた。

 

 夕方を迎えた冬の寒気はさらに冷たさを増し、蓑笠を着用しているとはいえ、ボロボロで薄い着物姿の二人の肌を容赦なく攻め立てる。

 

 そしてとうとう寒い空からサラサラの粉雪が降り始めた。

 

「こりゃぁいかん。雪が本降りになりそうだ。トキ、ちぃとばかし飛ばして帰るぞ」

 

「もちろん承知してます。私の手も凍ってしまいそうだわ」

 

 普段は弱音を吐くことなど殆どないトキがそう言うと、両手を口元に寄せ「はぁ〜」と息を吹きかけ冷たくなった手を少しでも温める。

 

「んじゃぁ行くぞ!」

 

「はいよ!」

 

 息のあった夫婦は、互いに気合を込め大八車をガラガラといわせて足早に道を進む...

 

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