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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第139話 人形

 顔色の酷く悪い行商人がニヤリと不気味な笑みを浮かべ、背負っている緑色をした風呂敷を地べたへ広げる。

 

 広げられた風呂敷の上には、人形やコマといった玩具が数点並んでいた。

 

 中でも夫婦の目を惹いたのが黒い長髪の女の人形であった。

 

 この時、その人形に清兵とトキは理由の分からぬ興味をそそられ視線を外すことすらできないでいる。

 

「その女の人形を是非ともくだされ」

 

 清兵はほぼ無意識に人形を欲していた。

 

「なかなかにしてお目が高いですなぁ。わけあって詳しくは申すことはできませぬが、こいつは何処ぞのお姫様がそれはそれは大切にしていた人形にございます。本来ならとてつも無く値のはるものでございますが、今日は一年を締めくくる大晦日の日なれば、お二人の善良な人柄を見込んでただで譲って差し上げましょう」

 

 行商人の粋な言葉に清兵が戸惑う。

 

「いやいやいや、そのような希少な物をただでいただくわけには...」

 

「なぁに、無用な遠慮は入りませぬ。ここで気前の良い行いをすれば、天も此奴には何かしらの運を与えねばと一考するやもしれませんから、どうぞ遠慮無く受け取っておくんなまし」

 

 「なるほど」と合点はいかぬまでも、行商人の心意気を無駄にしては失礼であると思い至った清兵は、何も言わずして女の人形を受け取ったのだった...

 

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