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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第1話 旅立ち ノ4

 愉快に笑う仙花の姿を見て、蓮左衞門、お銀、九兵衛の三人がそそくさと恥ずかしそうに正座して姿勢を正す。

 落ち着きを取り戻したお銀が弁解するようだ。

「光圀様。仙花様。お見苦しい姿をお見せし申し開きようもございませぬ。ですが以後、取り乱さぬよう改めます故、平にお許しくださいませ」

 今しがた鬼にような形相をしていた当人とは思えぬほど丁寧に頭を下げ、それに合わすように蓮左衞門と九兵衛も頭を垂れた。

「ハッハッハ~♪お銀、それに蓮左衞門に九兵衛、そう固くなるでない。お主達とは明日から共に旅をするのじゃ。面白おかしく行こうではないか」

「有り難きお言葉...」

 お銀が恭しく返し、三人は揃って尚いっそう深々と頭を垂れた。

 光圀は仙花の三人への対応を見て得心したのだろう、口角を上げ柔かに笑っている。

 仙花が手元の酒をグイッと飲み干し、ずっと気になっていたことを訊く。

「それはそうとじっさまぁ。さっきまで立ったまま爆睡していた筈の浪人が我武者羅に肉を喰らっておるけれども、其奴は何者かのう?」

 黒い長髪を後ろで束ね無精髭を生やすその男は、平均的な打刀の五割り増しほどの長刀を腰に差したまま、厳かに飯を食す滝之助と絹江の間に割って入り、遠慮無しに鍋の肉を貪るように食べていた。

「此奴は『居眠り斬り』の異名を持つ阿良雪舟丸(あらせっしゅうまる)という浪人じゃ。お主と出逢う前の旅先で知りおうた男でのう。儂の覚えがある者の中では随一の剣士じゃ。雪舟丸よ、食ってばかりおらんで仙花に挨拶せい」

 言われた雪舟丸が勢いよく動かす口を止め、中の物をゴクッと飲み込み箸を置いて仙花に目を向ける。

「貴方様の話は何年も前より伺っておりました。お初にお目に掛かります仙花様。此度は貴方様の護衛役を務めさせて頂くことに相成りました居眠り斬りの雪舟丸にございます。命を賭して御守りする所存にあれば...........すぴぃ〜、すぴぃ〜」

 あろうことか雪舟丸は挨拶の真っ最中に眠ってしまった。
 呆気にとられる仙花と他多数。

「こっこっこっ。こういう奴じゃて気にするな。雪舟丸が真に目を覚ましておるのは一日で僅かに一刻のみ。あとはずっと眠りながら行動する摩訶不思議な男よ。だが案ずるでないぞ。当人いわく半分寝て半分起きている状態らしいからのう。そうじゃな...試しに見ておれ」

「えっ!?」

 光圀は言い終わるや否や手元にあった梅干しを一つ掴み、寝ている雪舟丸の顔面目掛け投げつけた!?

 

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