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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第2話 出雲の地へ ノ9

 そのまま川を横断するように真っ直ぐ泳ぐ。
 彼女の水泳経験は何度か光圀に川へ連れて行かれ泳いだ程度だったが、経験の浅さを感じさせない素晴らしい泳ぎっぷりであった。

 突拍子もない仙花の行動に唖然とした表情だった一同。
 うち、両目を塞いでいた蓮左衞門が手を外し、彼女の泳ぐ先にバシャバシャと水をはねらせるなにかを見つけた。

「ん?あれはぁ...わ、!?童が溺れているでござる!こうしてはおれぬ!」

 蓮左衞門は叫ぶや否や旅装束を破るように脱ぎ捨て、白いふんどし一丁の姿で仙花の跡を追うように川へ飛び込んでだ。

 だが、彼女の手助けをせんと勇んで行動に移した蓮左衞門に異変が起こる!
 
「わっぷっぷぷ!!きゅっ、九兵衛!助けてくれぇっぷ!せっ、拙者っ!金槌なのっを!わわっぷ」

 川へ飛び込んだはいいものの、どうやら蓮左衞門は意外にも本気で金槌だったらしい...

「...やれやれ、体力馬鹿のくせにまさか泳げないとはねぇ」

 見ていたお銀が額に手をあて首を振り憂鬱そうな表情をする。

「ま、今行きますんで待っててくだせぇ!」

 助けを求められた九兵衛が慌てて旅装束を脱ごうとする。が、此処で彼は「うっかり九兵衛」の本領を発揮してしまう。

「うぉっととっと!?」

 慌てて脱ごうとした旅装束が頭と首に絡まり、無理に動こうとして体勢を崩してすっころんだのだった。

「.....な...........」

 想像するに容易いが、お銀は何かを言おうとして面倒くさくなりやめた。

 九兵衛がなんとかふんどし一丁の身となり、溺れる蓮左衞門の元へと向かう頃には水面に腕だけが残って沈みかけている。

 幸いなことに岸から僅かしか離れおらず、ギリギリ九兵衛の足が水底に着く位置だったおかげでなんとか救援することが出来た。

「ふ〜。間に合ってよかったでさぁ。危ないところでしたねぇ」

「か、かたじけない...」

 蓮左衞門は朦朧とする意識の中で呟くように言葉を発した。

 身体が動かなくなった蓮左衞門の両脇を抱え、後ろ向きでゆっくり岸へと進む九兵衛の横を、背中に幼い女子を乗せた仙花が泳いで通る。

「せっ、仙花様。お見事です」

 九兵衛が褒め称えると、仙花は余裕の笑みを浮かべて見せた。

 岸へと辿り着き、女子を抱き抱えながら川から出ようとするところへお銀が駆け寄り旅装束の上着を仙花に被せる。

「躊躇なき人助けとは天晴れににございます。されども乙女としての恥じらいも...」

 お銀が説教しようとした口を手で制した仙花が女子を地に寝かせ、穏やかな顔を作り話しかける。

 

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