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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第2話 出雲の地へ ノ10

「其方、なぜ一人で川などに入ったのだ?見るにまだまだ幼いではないか」

 溺れかけた幼い女子(おなご)は疲弊した様子であったが、どうしても伝えなければならないことがあり声を振り絞る。

「橋から落ち、て...お、おっとうとおっかあが、お、襲われ、る」

「なにっ!?其方のご両親は今どこにおるのだ!?」

 仙花の表情に緊迫感が走り、女子には辛かろうと思ったけれど火急の状況と悟り更に問うた。

 女子が横目で遠くを見つめて指差す。

「あ、あのは、し...」

 もはや女子の声は今にも消てしまいそうなほど小さく掠れていた。
 仙花は指差す方向へ視線を移し、遠くにある橋を確認するとお銀に伝える。

「お銀、儂はあの橋に向かうゆえこの子を頼む!」

「えっ!?仙花様お待ちを!」

 お銀の二度目の制止も振り切った仙花は、側にい置いてあった矢筒と弓、それに加え光圀より授かった脇差の「風鳴り」を掴み取ると、旅装束の上着一枚の姿のまま駆け出してしまった。

「九兵衛!蓮さんは恐らく大丈夫に違いない!この子を任せたぞ!」

 お銀はそう言い残して足早に仙花の跡を追った。

「へっ!?へいっ!任せておくんなまし!」

 遅れて返事をする九兵衛。お銀に強い口調で言われ只事ではないことを悟り、蓮左衞門をぽいっと放置して女子の看病にあたる。

 一方の仙花は上着をひらひらさせ、美しい白い肌を見え隠れするのも気にかけず、疾風の如く河原を駆け抜け橋へと向かっていた。

 脚には絶対の自信を持つ追うくノ一のお銀が全力で飛ばすも、仙花との距離が縮まらないことに驚愕してこぼす。

「なんて速さだい。このあたしが追いつけないなんて...」

 正に風を切るように駆ける仙花の目に、橋の上にいる五人の男達と、その前に土下座して平伏す男女二人の姿が飛び込んだ。
 そして五人のうち一人の男が今にも刀を振り下ろさんと構えている。

「ちっ、間に合うか?」

 呟いた仙花は走る脚を止めず、背中に担いだ矢筒からー本の矢を取り出し弓を構えしならせた。

「バシュッ!!」

 驚いたことに、放たれた矢は弧を描かず凄まじい速さで鉄砲玉の如く一直線に標的の男へと飛んだ!

「ゴブッッ!!」

「っ!!??」

 矢が男の頭に直撃し頭蓋骨を砕き貫通する!
 女子の父母を斬ろうとしていた哀れな男は、我が身に何が起こったのかすら理解できぬまま、頭から血飛沫をあげその場に崩れ落ち絶命した。

「なっ!?なんだっ!?なにごとだっ!?」

 後ろで武器を構えた四人のうちの一人が目の前で起きた惨劇に震え狼狽する。

 

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