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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ24

 仙花もそれに合わせ、光圀により譲り受けけた家宝、稀代の名工「吉貞」が渾身の一振りである脇差「風鳴り」を鞘から解き放つ。

「へっへっへ。小娘相手に芥五人衆が二人がかりとあっては芥藻屑の名折れもいいところだなぁ。わては高みの見物をさせてもらうとしよう」

 と、気持ち悪く笑いながらまるで忍者の如き身のこなしで社の屋根へと飛び移る沙河定銀。

 いよいよ一騎討の様相を呈した二人が互いに真剣を構え睨み合う。
 真剣勝負経験の豊富さを感じさせる落ち着いた雅楽奈亜門に対し、十六の仙花にしてみればこれが人生初めての命を賭けた勝負。の、はずなのだが、刀の構えこそまだまだぎこちなさが残っているものの空恐ろしい集中力を見せ、落ち着き払った挙動をなしていた。
 
「ほう、かなり若くしかも女だというのに見事な構えだな。折角だ。正式に殺す前にしっかり名乗っておくがいい」

 仙花が目を僅かに細め、「風鳴り」をカチャリと己の右肩付近に構える。

「我が名は刀姫こと水戸仙花!貴様ら悪党を斬るに迷い無し!覚悟せい。いざ参る!」

 言い放つと同時に雅楽奈亜門へと駆け出す仙花!

 疾風の如き速さであっという間に攻撃範囲に入り込み、達人級の剣速の一振りを繰り出す!

「っ!?」

 予想に反する速さに一瞬驚愕した雅楽奈亜門だったが、これまた驚愕の速さで咄嗟に刀で防御する!

「キッィーン」

「なっ!?」

「ビュッ!!」

 防御の一振りで仙花の風鳴りを弾き、尋常とは程遠い速さで攻撃に転じた一振り!

「シュッ!」

 その横に薙ぎ払われた剣に反応し、地面を右足で蹴り上げてかわす仙花の旅装束が切り裂かれた。

 仙花は背後を取られてはなるまいと風鳴りを地面へ突き刺し、くるりと反転して雅楽奈亜門のいる方へ構えなおす。

「あれをかわすとは大したものだ刀姫...実のところお前が四谷流甲斐を殺ったってぇ話しは俄かに信じちゃいなかったが、どうやらあながち嘘でも無いらしいなぁ...」

「葬った四谷流甲斐のことはどうでもいい。だがお主の剣速はなかなかのものだ。褒めてやろう」

 仙花の動きを見て只者ではないと悟った雅楽奈亜門が余裕たっぷりな表情で返す。

「それはそれは、才覚溢れる刀姫からお褒めに預かり光栄至極というものだ」

「ハッハッハッ!儂は『なかなか』だと言ったのだぞ。お主の剣速は確かに速い。剣の速さだけで言えば全国で十本の指には入ろうよ。しかし儂は今日『神速』なる剣技を拝んだばかりでのう。それに比べればお主の剣速など半分にも満たぬ、と云ったところであろうな」

 

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