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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ25

「...........すぅ~...はぁ~...」

 継続して口にする挑発めいた言葉に対し、彼女の倍くらいは人生経験を積んでいるであろう雅楽奈亜門が大きく息を吸い込んだあと、ゆっくりと吐いて平常心を保とうと努力する。

「何処までも挑発的だねぇ。だが剣士たるものそんなもんで心を乱してはならぬが当たり前というもの...とは言え、たったあれだけの攻防で俺の剣技を勝手に軽んじてもらうってのは甚だ遺憾ではあるがなぁ...」

 と睨みを効かせる雅楽奈亜門に飄々と応対する仙花。

「自慢では無いが...否、包み隠さず自慢になってしまうのだろうが、儂の父は水戸藩随一と云って良いほどに洞察力のある人でのう。その父が申すに、儂の洞察力は父に負けず劣らず優れているということだった...だからお主の剣技に対する儂の見立てはそう外れてはおらぬと思うぞ。おおかた初撃を防御した剣速がお主の限界であろう。あの状況では咄嗟の反応に手加減を挟む暇などある筈もなかったろうからな」

 瞬く間だっだ攻防を分析し、こんこんと語られた雅楽奈亜門は肩の力を抜き、構えは取らず刀を地面へ向けている。

「...可愛い娘の戯言だと考えても、やはり気に食わねぇぜ。まるで俺の剣技を完全に見切ったような口ぶりだしなぁ。まぁ、小娘の言うことに一々腹を立てても仕方なし...何処まで己の分析が正しかったのか、自らの身体をもって得と知るがいいさ」

 と言い終え、どういった意図からか刀をゆっくり丁寧に鞘へと戻す。
 ニヤニヤした顔で静観している沙河定銀が雅楽奈亜門に声をかける。

「おいおい、亜門。まさか、まさかとは思うがそんな小娘相手に奥義を出す気じゃぁあるまいな?」

 声の主の方を見向きもせずに答える雅楽奈亜門。

「フン。俺の剣速をたったあれだけの攻防で過小評価されたとあっては速剣の名折れ。我が最速の剣技をもって葬らねばあとの寝付きが悪いだろ」

「なんだ、顔にこそ出してねぇが人の目につかね心中は怒りで煮えたぎっていたか...」

 誰にも聴こえぬよう、ぼそぼそと呟く沙河定銀であった。
 
 雅楽奈亜門が静かな一息で呼吸を整え、腰の左側につける鞘に収まった刀の柄に手を近づけ固定し、弱冠身体の重心を低めて抜刀の構えを取る。
 
 仙花に何か大事があってはならぬと集中し、固唾を呑んで一騎討ちを見守っていた蓮座衞門が助言する。

「仙花様~!どうやら奴は最近流行りの居合抜きをしようと考えているでござる!お気をつけくだされ~!」

 

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