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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ49

「おっと残念!此処から先は絶対に通さないよぉ...あんたぁ、あからさまに忍者の格好をしているけれど...ふ~ん、どうやら駿河の者のようだねぇ」
 
 お銀の登場に一瞬怯んだ紅樹が即座に冷静さを取り戻し、相手が何者かを探ろうと会話を合わせる。

「...里は捨てた。今は芥五人衆が一人、『忍剣』の果綱紅樹(はてづなこうじゅ)を名乗っている。して、俺の行手を阻む貴様の名は?」

「フフフ。あたしはくノ一の『お銀』。別に覚えて貰わなくても結構よ。自己紹介はあんたのお仲間の沙河定銀にたっぷりとしたのだけれど、すぐ殺しちゃった後で『時間の無駄』を痛感しちゃったのよねぇ」

 沙河定銀の名を聞いた紅樹の表情が曇る。と云っても、彼は忍び装束を身にまとい、顔は覆面で覆われているため真に感情を読み取ることは難しい。

「なるほどな。通りで一晩経っても蛇腹へ戻らぬわけだ...もしや、雅楽奈と四谷も貴様が殺ったのか?」

 囚人を追っていた筈の果綱紅樹はすっかりと脚をとどめ、可能な限りお銀から情報を訊き出そうとしていた。

 もちろんそんなことは百も承知のお銀。彼女からしてみればいくら重要性の高い情報を流しても、どうせ殺してしまうのだから全く構わない。むしろ囚人達が安全な場所まで移動する時間稼ぎに都合が良いくらいのものである。

「その二人を殺ったのはあたしじゃないよ。あんたが此処へ来るまでに見かけた少女がいるだろう。彼女、仙花様が雅楽奈と四谷の二人を倒したのさ」

「......あの娘がねぇ。人は見かけによらぬものだ...」

 お銀の耳に届くか否かというほどの小さな声で果綱紅樹は呟いた。
 そして何かを思い立ったのか、背中に手を回して結んだ鞘から刀を引き抜く。

「貴様らが何者かは未だ把握しておらぬが、芥藻屑の敵であることは重々理解した。どうやら貴様を此処で斬り捨て、急ぎ囚人どもをなんとかせねばならぬ状況のようだ。押し通らせてもらうぞ」

「あらあらあら、楽しい会話をもう終わらせるきかい?あたしとしてはもっと会話を楽しみたいのだけれどねぇ。ところで...!?」

 お銀が無理矢理会話を続けようとした矢先、此度の敵襲は芥藻屑にとって存続を左右する事件と悟った果綱紅樹が、もはや「話しなど不要!」と言わんばかりにお銀へ刀を向けた!

 素早く懐へ入り込まれた一撃だったが、お銀は難なく攻撃をかわし、敵の隙だらけの首を狙って手刀を叩き込む!

「シュッ!」

「!?」

 だが叩き込んだ手刀には何故か手応えがないまま空振りに終り、先程まで見えていた果綱紅樹の姿が霧のように消えた。

 

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