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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ88

「.............」

 黙する源蔵は父親の言葉を受け、己がどうするべきか頭の中で急速に処理する共に吟味した。

 だが複雑かつ衝撃的な父親の告白に対し、圧倒的に短い時間のあいだで、人生経験の少ない十三歳の精神年齢が簡単に良い答えが浮かぶ筈もなく、源蔵は考えれば考えるほどに焦燥し苛立ちを覚えていく。
 
 どうしようもなく複雑な心境に追い込まれた彼の脳と心はやがて、単純明白かつ楽にこの状況を脱するための方法を導き出す。それが理性からなのか、はたまた本能から導き出されたものなのかは当の本人ですら理解していなかったのだが...

「こ、殺す...殺す。殺してやる...その方が良い、良いに決まってる...父上!僕は貴方を殺すことに決めましたっ!」

 韋駄地家の後継として大いに期待し、赤子の頃より此処まで大事に育て上げてきた実子からの死の宣告。

 大事件になる様相を呈して来た現状に
源蔵の父、蔵之介は微塵も動揺することなく至って冷静に彼を真っ直ぐに見つめていた。

「...至極最もな判断だ源蔵。この父は韋駄地家のことを優先して考える余り、恐ろしくも息子のお前を殺そうとした罪深き人間。否、もはや人の道を踏み外した外道であろうな...手前勝手な話しだがお前に殺されるなら本望というもの。覚悟はとうに決めていた。さぁ、一思いにやるが良い...」

 冷静沈着にして淡々と語る父親に、源蔵の爆発していた殺意が僅かに鎮火するも首を振って咆哮を上げる!

「ぅおおおーーーっ!!!望み通りやってやる!!!あの世へ逝ってしまえーーーっ!!!!」

 源蔵が己へ向けられた刺客から奪った刀を鞘から抜き放って構えたその時!

「兄様!おやめ下さいっ!!」

 背後から突然聴こえた女の叫び声に源蔵の身体が刀を構えたまま「ビタッ!」と静止する。
 
 後ろを振り返らずとも声の主が誰なのか源蔵は察している。一つ下の愛すべき妹である紗夜に他ならなかった。

 変わり果てた姿を見られてしまうことを恐れた源蔵が何も言わず固まっていると、目の前の蔵之介が紗夜に声をた。

「紗夜、もしや其方。話しを聴いておったのか?」

「...はい。父上にお酒を運ぶ折、廊下に立って二人が話すのを聴いておりました...」

 幸か不幸か、紗夜の声のお陰で親殺しをすんでのところで踏み止まった源蔵が、やはり後ろを振り向かずに紗夜に話しかける。

「紗夜、すまぬが障子を閉め、部屋に入ってはくれぬか?...其方を含めて話したいことがある...」

 

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