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一輪の廃墟好き 第50話 30年前の事件

 神殿の鍵が壊されたドアを抜けて外へ出ると、夕方近い時間帯となっていたことも手伝い、空を見上げれば灰色の雲が覆って淀んでおり、薄暗い空間の中にボロボロで今にも崩れそうな一軒家。

 誰も住まなくなって30年という長い月日が流れ、すっかり風化してしまった淀鴛さんの実家は、ありきたりな言葉でくくって仕舞えばまさに「お化け屋敷」であった。

 天気の悪さによって光が少ない所為で、「お化け屋敷」はより一層その不気味さを増している。

 詳しい事前情報さえ仕入れて無ければ、幾つもの廃墟を探索してきた僕だけに、そこまで不気味に感じはしなかったのだろうけれど、驚くべき確率の偶然によってこの家の所有者である刑事の淀鴛さんと出会い、この場所で30年前に恐ろしい事件があったことを聞いたばかりで怖さ倍増っといった具合だった。

 淀鴛さんの話によれば、彼のご両親はこの家の裏にある釜戸に頭が突っ込まれ焼け死んだとのことであった。

 時を経て成長した彼が調査して出した答えは他殺、いわゆる殺人事件だと断言していたが、事件当時、事件を担当した警察によれば、自殺という調査結果だったということは既に聞き及んでいる。

 淀鴛さんの話しを聞いた限りでは、どう考えても「殺人事件」だったとしか考えられない...

 

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