orutana2020のブログ

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一輪の廃墟好き 第68話 田舎の実家

 実のところ、僕が人魂(ひとだま)を拝見するのはこれが初めてではない。

 かと言って飽きるほど見たことがあるわけでもなく、25年というまだまだ短い人生の中で今回が通算二度目となる。

 確か初めて人魂を見たのは小学三年生の夏休みだっただろうか...

 遠い田舎にいる父方の両親、いわゆる僕にとっての祖父母の住む実家へ遊びに行った時のことだった。

 まぁ僕の父からすればお盆に実家の墓参りをするため、単に家族揃って泊まりがけで帰省しただけのよくある風景でははあるけれど...

 実家のあるその町にはJRなどの公共交通機関は通っておらず、飛行機に乗って鹿児島空港に降り立ち、空港付近にあったレンタカーを借りて車を走らせ、約三時間もかけてようやく辿り着いた。

 大人になった今でこそ三時間という時間はさほど気にならないものだが、小学三年生だった僕にとって飛行機で一時間、そこからまた三時間というのは途方もない距離に感じたものである。

 ならば後ろの席で黙って大人しく寝てれいれば良いものの、早る気持ちが抑えられず下手に起きてしまっていた僕は、運転席で運転する父と、助手席に座り実家までのナビをしたりする母に向かって、「ねぇ、まだ着かないのぉ」を少なくとも三十回以上は繰り返したかも知れない。

 両親にしてみれば一度や二度ならまだしも、そんな駄々を三十回も繰り返されてはたまったものではなかったに違いないけれど、兄弟もおらず、後部座席でただ一人座っているだけの僕にとってはなかなかに耐えがたい状況だったのである。

 そんな僕の気持ちを察してくれた父は、実家に着くまでに手頃な売店を見つけては車を止め、ソフトクリームやらジュースやらを購入して僕に手渡し、気を紛らわそうとしてくれたのだった。
 

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