一輪の廃墟好き 第69話 離島
僕は結局、田舎の実家に着くまで一睡もすることなく起きていた。
父の実家は鹿児島県のとある離島に在り、最後は一日に4、5回しか往復しないフェリーに車ごと乗り込み、島に入って10分と経たないうちに辿り着いた。
祖父母が子供の時から暮らすその家は、漁業や農業で生計を立てる人々が集まった港を中心とした集落に建っていて、当時で築50年以上は経過している木造の平家住宅で外観もかなり傷んでいたような記憶がある。
家には車を停める駐車スペースがなく、様々な種の船舶が繋がれている港のだだっ広い駐車場に駐車した。
父から「もう降りて良いぞ」と言われ、車のドアを開け外に出た瞬間、僕はかつて経験したことのない匂いに僅かだが動揺した。
それは海から吹く潮風に混じった異臭によるもので、気になって父から聞いた話では、海に浮かぶ生簀で鰤などの養殖をしている人達が、病気などで死んでしまった魚をまとめて焼いている臭いだろうとのことだった。
あれは強烈な臭いだったなぁ...
港の駐車場は意外なことに綺麗に舗装されており、そこから繋がる道路を5分ほど歩き実家の門を潜り、玄関に入った父が「ただいま〜!」と大きな声を張り上げる。
すると暫くして皺くちゃの顔をした祖母が、短い歩幅ながら急足で出迎えてくれたのだった...
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