orutana2020のブログ

文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

一輪の廃墟好き 第109話 寝るな!

 すき焼きは言わずもがな、それ以外に運ばれてきた料理の数々も殊の外美味であり、たわいのない世間話を助手と語り合いながら酒もグイグイと進み、僕はふと思った。
 「井伊影村の小さく質素な民宿むらやど、侮るべからず」と。

「他に選択肢が余り無かったとはいえ、この民宿は大当たりだったな、助手よ」

「うんうん♪大当たりも大当たり...なんだけど、女将さん一人で切り盛りしてるみたいだから結構大変そう...」

「ん?一人じゃないだろう?午前中ここへ着いた時は着物を着たお婆さんが対応してくれたじゃないか...そう言えばお婆さんの姿が見当たらないな...」

 僕はそう言いながら辺りを見回した。

「あぁ、やっぱり気づいてなかったんだ...」

「何に?」

 未桜のため息混じりの言葉に違和感を覚えた僕は、当然にして疑問系で返した。

「言っちゃて良いのかなぁ...」

「なんだなんだ、妙に勿体ぶった話し方をしてくれるじゃないか。中途半端な物言いは不要だ。気になるからさっさと知ってることを話してくれ」

 僕が若干強めの話し方をすると、酔いが回り、座って細くなっていた彼女の目が見開くどころか完全に塞がった。

「おい、寝るな。寝ても良いが僕の気持ちをスッキリさせてからにしてくれ。あ、いや待て、ここで寝られたんじゃあとが面倒だ。やはりここで寝るんじゃない」

「...フフフ、相変わらず厳しいお方だぁ。急に酔いが回っただけでさぁ...少しばかり寝かせてくれても罰は当たったりしやせんぜぇ...」

 ...誰だよお前は。

 

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