一輪の廃墟好き 第123話 殺人事件
「あっ!そうそう...ちょっと言いづらいのだけれど...」
テキパキとした女将さんにしては珍しく歯切れの悪い物言いをする。それに「ちょっと」の意味合いとは程遠い深刻な面持ちになった。
そんな姿を見せられては言いかけた言葉を聞き出さないわけにもいくまい。
「あのぉ、女将さん。僕達は何を言われても平気な人種ですのでお気になさらず続けてください」
正直なところ、勢いで「何を言われても」は過言だったと思う。僕は自分が傷つけられる言葉に過剰反応してしまうことがあるからだ。
無論、この場面で女将さんがそのような言葉を口にする理由など考えられない。
「...じゃあお客さんも知っておいた方が良いと思うので伝えておきます。...今朝方のことなんですけれど、村人の老夫婦が住む一軒家で二人の死体が発見されて...聞いた話ではどうやら殺人事件の可能性が高いらしいんです...」
なるほど、なぜ女将さんがこわばった表情をしていたのか理解できた。
まだ確定ではないが、この小さな井伊影村で起きてしまった殺人事件。民宿をたった一人で切り盛りしている女性の女将さんからすれば、犯人がまだそこら辺をうろうろしている可能性を考えると恐怖心で顔が硬ばってしまうのも無理わない...
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