刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第39話 綺麗
お世辞にも綺麗とは言い難い家の外観に比べ、中の方は真如が言っていた通りに「綺麗」なものであった。
江戸時代の平民の家というものは、ほとんどが煤や埃が床や壁を汚し、「綺麗」と呼べるようなものではなかったが、真如の家の中にはその煤や埃による汚れが一切見られなかった。もはや異常と言っても過言ではないだろう。
「ほう、これは見事なものじゃな。元の素材からして見窄らしいのは仕方ないとして、清潔さだけ取れば儂が住んでいたじっさまの御殿を超えてるかも知れん」
またもや一言多い仙花であったが、目を丸くするほど本気で部屋の清潔さに驚いていた。
全体的にこじんまりとしているものの、焦茶色で板張りの居間の真ん中には、意外にも上等に見える値打ちのありそうな囲炉裏一式が揃っている。
「儂は今よりあっちで食事の支度をする。お主らは囲炉裏に火を点けて湯を沸かし、そこのお茶でも呑んでおれ」
「お気遣いいたみいります。しかしながらお手伝いは必要なかったでしょうか?」
くノ一のお銀が手伝いを申し出た。彼女は忍者としはもちろん超一流であったけれど、包丁捌きや料理に関しても一流の腕を持ち合わせているのである。
「心配無用じゃ。チャチャっと作ってくるゆえゆるりとしておれ」
真如はお銀が何かを返そうとする前に、食事の支度をするため、日が沈んですっかり暗くなった外へと消えて行ったのだった。
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