刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第75話 絹江
と、屋敷の方から住み込みの世話役である絹江がとことこと現れた。
「光圀様、お客様への対応が及びませんで申し訳ございません。今しがた台所の方で手が離せなかったものですから」
「こっこっこっ、そんなことは気にせずとも良い。儂はいつでも暇を持て余しておるんじゃからな、こっこっこっ」
光圀はすこぶるご機嫌を良くしているようだ。
「まぁまぁ、光圀様のご機嫌麗しいお顔を拝見したのはいつぞやのことにございましょう。...それで其方のお方はいつお呼びになったのでございましょうか?」
「おっと、この娘さんは一人旅をしておってたまたま訪れてくれたんじゃよ。一晩泊めてやろうと思うが構わんかいのう?」
「えぇ、もちろんにございます。もう暫し経てば滝之助さんも獲物を担いで帰ってくることでしょう。今晩はこの絹江がご馳走を準備致しますゆえ、旅のお方は先にお風呂にでも浸かってくださいまし」
光圀の嬉々とした感情が絹江にも伝染したようで、満面の笑みで柚須灘(登代)の顔を見ながら伝えた。
因みに会話に出てきた藤間滝之助(とうまたきのすけ)は、絹江と同じく住み込みで働く用心棒兼食料調達係をしている若い武士である。
「突然訪れた者に対してのお二人の優しいお言葉、たいへんかたじけのうございます」
柚須灘(登代)は恭しく一礼したのであった。
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