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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第76話 鹿肉

 夕飯時になり西山御殿の居間では、柚須灘(登代)を歓迎してのささやかな宴会が開かれた。 

 食糧調達係の滝之助が狩りから持ち帰ったのは猪ではなく、野生の鹿であった。

 鹿肉は肉の赤みが強いのが特徴で、脂身があまりなく、ジビエ(狩猟対象の野生の鳥獣)特有のクセは少ないく、食感としては、一般に柔らかい牛肉に近い。現代では刺身を始め、鍋や焼肉など、様々な調理によって食べられているが、欧州(ドイツやハンガリーなど)では、鹿肉を始めとする狩猟野生動物の肉は高級レストランで特別に食べられる『最上の肉』として扱われているらしい。

 日本においては動物の肉を食べる習慣が活発になったのは、文明開花の象徴ともいわれた牛肉の消費が多くなった明治時代だというのだから、江戸時代の食文化から考えれば現代人が如何に肉食化したのか分かるというものである。

「鹿肉の鍋とは久しぶりじゃ。絹江さんや、そろそろ箸をつけても良い頃合いかのう?」

 目の前にある囲炉裏上の鍋の中、ぐつぐつと煮える鹿肉によだれを垂らしそうな光圀。
 隠居生活をする彼にとって、この時の将軍である「徳川綱吉」の打ち立てた「生類憐れみの令」などお構いなしである。

「はいはい、直ぐに取って差し上げますからね」

 光圀の浮かれた様子を可笑そうに眺めながら、鍋の鹿肉をとり皿へ移す絹江であった。

 

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