刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第93話 内容

「パシッ！」

　クナイを投じた暗闇の中で、それを手で掴んだか弾かれたかの音が聴こえた。

「...ほ、ほぉぉ。見た目と口の悪さの割にやるじゃないか。まさかこのオレを逆上させ、岩肌の壁を利用して反響させていた声を己に向けさすことを狙っていたとはな...試練の内容としては気配を察知することで成功というのが正解だったのだが、ん、まぁ、この手口は邪道極まり無いものだったとはいえ、ある意味では見事ではあるな...」

「やはりよく喋る仙人じゃ。して、第一の試練は果たしたことになったのか？」

「...合格だ。さて、そろそろお主の前に姿を現そうと思うのだが、提灯に灯りを灯すが良かろう。真っ暗闇では互いの顔も拝めん」

「別に儂はこのままでも構わんぞ」

「ケッケッケッ。口が悪い上に天邪鬼な奴だな。第二の試練に移るためにも灯りは必要だ。とっとと素直に点けるがいい」

「やれやれじゃのう。だがお主の言い分を聞いてやらねば試練も先に進むまい」

　仙花は如何にも面倒くさそうな素振りで火打ち石を鳴らし提灯のロウソクに火を灯もす。

　すると上方の暗闇から一人の仙人が「スッ」と舞い降り、彼女の前に姿を現した。

　妖怪のような笑い声をあげる偏屈者の仙人は、意外なことに圧倒的な美青年であった。

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