刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第104話
意識を失った仙花の脳内は「夢現(ゆめうつつ)」の状態となっていた。
実際は通常の睡眠状態で夢を見るのと変わらなかったのだが、そこには天心の精神仙術「悲壮霧中」の一差しが組み込まれている...
仙花の耳には何処か聞き覚えのある優しい落ち着きのある子守唄が届き、誰かは分からないけれど、柔らかく温かい腕に包まれていた...
顔を確かめようと視線を上げるものの、顎と唇しか確認することが出来ず、鼻から上部は白い靄のようなものがかかっており、「ぼんやり」してハッキリと捉えることができない...
だがこの状況から察するに、未だ認識して会ったことの無い母親であることは、理性的なものではなく、己の本能がそう告げているかのようだった...
紅葉のような小さな手が視界に入り、己が赤ん坊であることを朧げながらに知覚する...
「もしや母上か?」と口に出したいところなのだけれど、唇が思うように動かせず言葉に出来ない…
話しかけることを早々と諦め、初めて感じる心の安らぎに身を任せ、あまりの心地よさにウトウトとし出したその時。
母親の唄声とは明らかに違う野太い声が響く。
「○○○...この子の名前は決めたのかい?」
男の声で子守唄を唄う母の名を呼んだようだが、やはり上手く聴き取れない...
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