刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第1話 旅立ち ノ11
仙花が受け取った黒板をまじまじと眺めると、縦書きで四つの文字が刻まれていることに気づきく。文字は光圀からみっちりと教わり大体読めた。
「鳳来極光(ほうらいきょっこう)....じっさま?」
これは何?という分かりやすい表情の仙花に光圀が頷く。
「その刻まれた『鳳来極光』の文字は恐らく刀の名じゃな。とにかく柄の穴にはめてみよ。驚くものが見れるぞ」
意味深な言葉を聞いた仙花が躊躇せす柄の頭部分の空洞に石を入れる。
石はすんなりと入り、カチッと音を立てて柄の中で固定された。
「よしよし綺麗にはまったな。ならば先程と同じように鞘から刃を抜き見てみるが良い」
「....うん」
仙花はコクンと頭を縦に振り、またゆっくりと丁寧に刀を鞘から引き抜く。
「おお!?」
僅かに動かしただけで刀に異変が起こったことを悟った。否、仙花で無くとも誰であれ気付かずにはいられなかったであろう。例えそれが盲目の者だったとしても。
刀の鍔(つば)の先にある白いハバキ、その先から伸びる刀の刃が鞘からほんの少し姿を現したが、その刃から眩い光が溢れ出したのである。
薄暗い部屋の中で目にした光は眩しすぎて、耐え難くなった仙花は刀を鞘へ「キン」と戻した。
「じっさまの言ったったようにしかとお驚いた。なんなのだこれは!?刀が、刃が光を放ちおったぞ!?
「こっこっこっ。今のがこの刀の真実の姿であろうな。実は先に渡した黒板は六年前に道端で倒れておったお主を拾った時にのう。近くの草むらの中に落ちていたのを見つけて大事にしまっておったのよ」
...二人の出逢いは六年前の話である。
光圀が諸用で江戸に出向き二泊滞在した後、早朝より馬に跨りながらの帰路。その日は小雨の降り注ぐ生憎の天候であった。
雨によって状態の悪い山道を力半分の速度で馬を走らせる光圀。彼の被る竹笠からは雨水がほとばしっている。
その右後方には同じくして馬を走らせせ護衛役を勤める藤間滝之助の姿があった。
滝之助が見通しの悪い前方に何かを見つけ馬の速度を上げ光圀に並ぶ。
「光圀様!馬を止めてくだされ!道のど真ん中に人が倒れております!」
「なんだと!?」
光圀が素早く手綱を引き馬の脚を止めた。
二人は馬から降り、腰に帯びた刀の柄に手を掛け、山賊がいるかも知れないと周囲に気を配りながら倒れる人物に近づく。
「子供、か?」
「身体の丈からしてどうやらそのようですな」
雨の降る中、ずぶ濡れになり道のど真ん中にうつ伏せで倒れる人物。それこそが後の刀姫こと仙花であった。
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