orutana2020のブログ

文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第1話 旅立ち ノ12

 ピクリとも動かない子供の側に寄り、生死を確かめるため背中に触れ軽く揺する。

「どうじゃ。その子は生きておるか?」

「少しお待ちを」

 揺すっても子供が反応を示さず、光圀の問いかけに答えられなかった滝之助が、子供の後頭部に左手を添え抱き抱えて鼻に耳を近づけ息を確かめた。

「......息はしておる様です。しかし、雨に長く打たれていたのか身体が途方もなく冷たい....」

 聞いた光圀が子供を案ずるような表情をし滝之助に指示を出す。

「その者を儂の背中に振り落とされないようきつく結べ。社まで連れ帰る」

「なっ!?なんですと!?」

 滝之助が自分の耳を疑い聞き直す。江戸の時代初期は人の死体などが道端に転がっているのは珍しくなく、飯を食わせていけず親に捨てられた子や、親を失い彷徨う子供も少なくなかった。
 人間性云々は別として、何の気まぐれか光圀の「連れ帰る」という言葉が信じられなかったのである。

「連れて帰ると言ったのじゃ!ぐずぐずするな!早うせい!」

「しょ、承知!只今っ!」

 怒気とまではいかないが久しく感じる光圀の覇気に当てられ、滝之助は子供を抱いたまま慌てて自身の馬のところまで戻り、布巾着に入れておいた縄を取り出した。

 想うところがあり、同じくして馬を寄せた光圀に進言する。

「光圀様。誠に失礼ながら申し上げます。いくら子供といえども人を背負って馬を走らせるのは余りにも負担が大きゅうございますゆえ、拙者が背負わせていただきたく存じます」

 止まない雨の降る中、光圀が自身の身体を気遣う護衛役に薄く微笑みかける。

「気遣いは無用じゃ。儂も何に突き動かされているのか分からんのだが、その子は儂が守らなければならぬと強く感じておるんじゃよ」

「左様ですか...ならば」

 光圀の表情を窺い、これ以上の問答は無意味と悟った滝の助は光圀の背後に回り、絶対に不具合が起きぬようきつく慎重に子供を縛りつけた。

「では、失礼します!」

「うむ」

 子供を背負って馬に乗ろうとする光圀を手伝う滝之助。
 しっかり体勢が整ったことを見届け、自身も馬に跨ろうとすると。

「滝之助!そこの草むらに微かに光る何かが見えた。すまんぬが確かめてくれ」

「はっ!」

 短く返事をし光圀の指差す草むらへ小走りに駆け寄った。

「なんだこれは?...........」

 草むらの中で淡い光を放つ黒い板。
 初めて見る摩訶不思議なそれを用心深く広い上げ、訝し気な面持ちで確かていると、黒い板は淡い光を放つのをやめた。

 

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