刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第1話 旅立ち ノ20
忍者の戦闘スタイルは侍のそれより多様である。
しかも相手が同じ忍者となれば忍法合戦もアリの状況で刀を手に取った磨伊蔵。
「ほ~、これは面白い。忍者にしては珍しく先に刀を出すとは...よほど自信があるんだねぇ...じゃああたしもお付き合いしちゃおうかしら」
対するお銀が相手の近接スタイルに合わせ、忍び装束の袖から短刀をスッと出し二刀流で構え舌舐めずりをする。
しんと静まり返る西山御殿の屋根上、先に仕掛けたのは磨伊蔵であった。
懐に手を入れたかと思うと手裏剣を取り出しシュッ!と投げつけた!
「キン!キィン!」
お銀が不意に飛んで来た二つの手裏剣を最も容易く短刀で弾く!
「同じ忍者相手に礼儀をどうこう言うつもりなかったけれど、情けないわねぇ」
と言っている間に磨伊蔵が間合いを詰め斬りかかる!
「キン!キィン!キィン!キン!キキン!」
一本の刀と二本の短刀が何度もぶつかり合い火花を散らす。
一二撃受け流し必殺の一撃をお見舞いするつもりだったお銀は、磨伊蔵の剣術の実力だけは認めざるを得なかった。
その一撃を繰り出す隙を与えて貰えないほどに磨伊蔵の剣術は卓越したもだったのである。
「やるはねぇ。あたしと何合も合わせられるなんとは、ようやく実力発揮といったところかしらねぇ」
「フッ、余裕のつもりか?その美しい身体を傷付けるのは少々気が引けるがこのまま押し切らせてもらうぞ!」
激しい攻防の最中で磨伊蔵が徐々に剣速を上げていく。
お銀がこのまま押し切られてしまうのかと思いきや、彼女も剣速を上げ負けず劣らずの攻防となる。
両者の手数は多いものの互いが決め手に欠け、刀と刀の激しいぶつかり合いは続いた。
とそこへ。
「おほ~っ!楽しそうな戦いをしておるのう!儂も混ぜてくれ~♪」
寝室で雪舟丸の話しを聞き、自ら曲者を倒さんと息巻いた仙花が屋根上に現れた。
お銀と激戦真っ只中の磨伊蔵が仙花の声に気付き舌打ちする。
「ちっ!女狐が片付いておらんのに刀姫か!?やむを得ないな...女狐っ!決着はまたいずれつけようぞ!」
「はん!貴様にいずれなど無いわ!ここで捕まえ秘密事を吐いてもらう!」
此処でお銀渾身の一振り!
だが磨伊蔵は素早く後ろに退きそれを紙一重でかわした!
そして懐から指の間に四つの小さな玉を挟んで取り出し屋根瓦に投げつける!
「ボボボボン!!」
忽ち煙がモクモクとわき上がり、辺りは煙で視界零となった。
コホコホと咳き込むお銀の耳に、濃い煙の中から磨伊蔵の声が届く。
「これぞ秘技!爆煙玉よ!女狐、これにてさらばだ!」
その声を最後に、屋根上から磨伊蔵の気配は消え去った。
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